特定非営利活動法人 西日本自然史系博物館ネットワーク
設立代表者
生涯学習時代と言われる現在、国民の学習意欲や知的欲求は高まり、博物館が多様な活動でこれに応えることが強く求められている。一方、都市化・近代化の波と有り余るほど豊富な物資に囲まれた日常生活の中で、人心からは自然の大切さ、命の大切さが忘れられがちになっている。この様な時代にあって、身近な自然に目を向けて自然のしくみを理解し、かけがえのない自然を守ることの大切さを体験的に学ぶ機会と場を提供する事が求められている。絶滅の危機に瀕している生物を保護するとともに、開発の波の中で失われようとしている自然に関する資料を収集し保管して、展示や普及活動に活かし、生涯学習や新指導要領の「総合的な学習の時間」、さらには児童・生徒の「命の大切さ」教育に役立てる事の必要性は急速に高まっている。そのため、自然史系博物館園が地域住民と一体となって多様な活動を展開し、学校教育の現場とも連携して学習支援を行なうことは、まさに時代の要請といえる。 しかし、地方の館園は、財政面でも専門職員(学芸員)の確保の面でもきわめて厳しい情況に置かれている。また、細分化が進むとともに専門性が高まっている自然史科学において、個々の館園があらゆる分野について専門職員を配置することも困難である。一方で、大量の自然情報を整理しなおして発信する事が求められており、展示についても新たな技法を導入して親しみやすくて解りやすいものにする事も必要になっている。このような中で地方の館園は、それぞれの地域の特殊性に基づいて各館の特色を生かした活動を展開している。
平成12・13年度に文部科学省の科学系博物館活用ネットワーク推進事業の一環として組織された「環瀬戸内地域(中国・四国地方)自然史系博物館ネットワーク推進協議会」は承名地域の公立7館園※が中心になって、自然史分野における現代的課題としての「絶滅危惧生物ネットワーク」、身近な自然に学ぶ「里山総合学習支援ネットワーク」、横断的な「インターネットGISシステムの整備」を柱とした事業に取り組み、多大な成果を挙げた。同時に、広島での講演とフェスティバル「瀬戸内の自然—自然史博物館で学ぶあなたの町の自然」のイベント等を開催し、参加館園、友の会および関連団体相互の交流が深められたことも画期的であった。
このネットワーク事業が遺した貴重な経験と成果を継承し、さらに広範な自然史系博物館園および学芸員、関係する個人の参加を得てネットワーク事業を発展させていくために、ここに「西日本自然史系博物館ネットワーク」を特定非営利活動法人として設立する。
法人は博物館や学芸員も含めて広く参加者を募り、企画展・巡回展などの共同事業およびさまざまな事業についての情報の交換・共有にとりくむ。このことを通じて特定非営利活動推進法に示されている社会教育の推進を図る活動、学術・文化・芸術又はスポーツの振興を図る活動、環境の保全を図る活動はもとより、まちづくりの推進を図る活動、国際交流の推進を図る活動、子どもの健全育成を図る活動、およびこれらの活動を行なう団体の運営または活動に関する連絡、助言又は援助の活動に貢献していくものである。
※大阪市立自然史博物館,笠岡市立カブトガニ博物館,倉敷市立自然史博物館,高知県立牧野植物園,島根県立三瓶自然館,徳島県立博物館,兵庫県立人と自然の博物館